「やあ、中々に遅かったじゃないか、また二度寝でもしたのかい、タヌキ」


「違いますよ、そこまで言うことのない問題が起こりまして」


「それにしてもさ、タイガーのお世話役はタヌキに決定したんだろ?だったら言い訳をしないで役目を果たしなさい」


スーツを着こなし、フレームのメガネをかけて知的な印象を受ける男性はアニマル荘の住人...というか寮長さんの旦那さんである。


「え、キリンとタイガーって知り合いだったの?」


「だからね、学校ではキリン先生って呼べって何度......まあ、いいや、空港からアニマル荘まで送って行ったの僕なんだよね」



「ああ、だから朝食のときに居なかったのね」


「おっと話がずれたね、というわけでアニマル荘の連中はバカばっかりだけど住めば都という言葉もあるだろ?タイガーもせいぜい頑張ってよ」



「は、はぁ.....」



適当なキリンの様子に少し引いているらしい。


そりゃそうだ。あんなに知的な感じのする男がこんな適当人間なんだから



「それじゃあタヌキはお役御免だから教室に行っていいよ」


「えーーこんなタイガーのお世話役になったんだからさ何かご褒美的なのくれたっていいんじゃないの?」


「こ、こんなだと!っ......」



タイガーは怒鳴りつけようとしたが、職員室だと気づいて静かになった


「それじゃあいつもお世話になっているキリン夫妻への旅行費を払わせてあげる権利を......」


「しっつれいしました!」


キリンが言い終わる前にさっさと職員室から出て行った。


職員室から教室までかかる時間は大体2分くらい。早めに学校に出たっていうのにいつもより遅くついた。


「なあ!何で俺も連れて行ってくれなかったんだよ」


入ってすぐに声をかけてきたのはワン太だった。


「いや、だって二人で行ってもどうしようもないでしょ、そしたらネコタの相手してもらってる方が...」


「ねえねえ!タヌキ!アニマル荘の住人で転校してくる人いるって本当?」


やっぱり噂はとうに広まっていたらしく、すぐに囲まれてしまった。



「とんでもない美少女とか」


「えー美少年って聞いたんだが?」


「おっさんっぽいっていうのは?」


「宇宙人って聞いたけど」


「いやいや、なんとかっていう偉人の子孫だって聞いたぞ?」



と、なんとも支離滅裂な噂話ばかりだ。

まあ、美少年っていうのは当たっているか。



「アニマル荘ってのは本当。まあ、容姿は後二分もすれば見れるから楽しみにしていなよ」


それに合わせたように予鈴のチャイムが鳴り、自分の席についた。