「俺もこの前はごめん。
あの時、一年の誘い断っても良かったよな」


郁がそう言ったけど私は首を横に振った。


「ううん。郁は悪くない。
私が勝手に逆ギレしちゃっただけだもん」


郁は優しく微笑んだだけでもう何も言わなかった。

私は郁の数十センチ後ろを歩いた。


「ねぇ、郁は知ってたの?
冴木くんたちがしてた事」


ふと、一つの疑問が浮かんで問いかけた。


「うん。
去年同クラだったし今と同じ事してたから」


「私が告白されてたのは知ってたの?
何であの場面で助けに来れたの?」


「告白は偶然聞こえた。
あの場面で助けに行けたのは…
放課後、冴木達残ってるのはいつもの事だったから気にしてなかったけど篠塚が忘れ物取りに行くの見えたからもしかしたらって思った」


何それ。
カッコよすぎるじゃん。

そんなの。


「ホントにありがと。
何かお礼がしたいの。
してほしい事とか無い?」


私が郁の横に並んで言った。
「宿題写させて」とか「掃除分担変わって」とか言われるのを覚悟していた。

でも郁はまた優しく微笑んだ。