「なんか名字で呼ばれると距離感じるから『郁』って呼んで?
みんなそう呼んでるし」


えぇ?!
私は今、きっと真っ赤だ。

もう辺りは暗いからばれてないだろうけど…


「わかった…
私、男子の名前呼び捨てするの初めてかも」


「まじ?
じゃあ、初呼び捨ての相手は俺って事か」


彼はそう言って優しい笑みを浮かべた。


全部、初めてなんだよ?


初めて恋したのも


初めて男子に対してドキドキしたのも


初めて男子と一緒に帰ったのも


あなたがすべて初めてなの・・・


そんな事を言ったらあなたはどんな顔をするのかな?

花野とイッくんの為にも幸せになりたいな。


ドキドキと愛しさがつまったこの気持ち。


「また、一緒に帰ってもいい?」


別れ際、思い切って訊ねてみた。


「いいに決まってんだろ。
じゃあ、また明日!」


手を振って彼と別れた。


少し距離が縮まった気がする。

ううん、縮まってるといいなぁ・・・・