私は最低だと思った。

好きでもない人と結婚してその人の子供を産んで。

1日でもイッくんを忘れた日は無かった。


それから10年。
私は30歳になった。

毎日ポストの中を覗いてしまう。
彼からの手紙が来てるかもしれない、と思ってしまう。

もう2度と逢えることはないのに。


洗濯をたたんでる時だった。

私の身体は相変わらず弱く、よく熱を出したり貧血を起こしたり。

その時、子供は小学校に通っていた。

胸が急に痛くなった。


「‥‥いっ‥た…」


心臓が口から出るんじゃないかってぐらいに大きく弾んだ。


怖い

助けて

イッくん。


私は働かない頭のどこかで呟いた。


(イッくんが迎えに来たの?)


そのまま私は倒れて意識を失った。

最後に目に入ったのはイッくんとお別れした時に見たような綺麗な青空だった。


私は30年間という生涯に幕を閉じた。
イッくんの元へ旅立った。