「イッくん!あーそーぼー」


花野はイッくんの家の前に立ち叫んだ。
水木郁人(ミズキイクト)こと、イッくんは花野の王子様。

花野が困っているといつも助けてくれるんだ。
そんなイッくんが大好き。


数分経ってイッくんが玄関から出てきた。


「花野、声デカすぎ。
部屋の中なのに耳がキンキンしたよ」


そんな事を言っていたけどイッくんは笑っていた。


「ねぇ!今日は何して遊ぶ?」


花野が尋ねた。


「そうだな…
じゃあ丘で遊ぼう!」


「うん!」


大きくうなずいて手を繋ぎ歩き出した。
花野たちはまだ小4。

イッくんとは家が近くの幼なじみ。
同じ団地で学校が終わってからも毎日のように遊んでいる。

楽しい時間をいつも過ごしていた。
いたずらをして怒られてもイッくんが居たから平気だった。


「い…た…」


ある日、急に胸が痛くなりだした。
いつもの事だ。
激しい運動や外に何時間もいると胸が痛くなる。