私は気が付いたら待ち合わせ場所の丘に来ていた。

ベンチに座った。

いや、座り込んだ、と言った方が正しいかも。


お願いします。

愛しい人を私から奪わないで…


もう彼を失うのだけは嫌なんです。


どれくらい時間が経ったのだろう。

私はずっと丘から見える景色を眺めていた。

この景色を見てるといつもと変わらなくてそれが本当に嘘に思えてきた。


お願い。

無事でいて。


ふと、私は大粒の涙を流してることに気が付いた。


「…っ…うぅ…ふっ…」


声を押し殺して泣いた。



もう、何も望まないから私からあの人を奪わないでほしい。





「何で‥‥泣いてるんだ?」