その足音は大きくなり、やがてあたしのすぐ後ろでぴたりと止まる。
そして、野太い声が廊下に響いた。
「白浜先生?
どうしたのです?」
その声から、国語担当のムネリンだと知る。
胴体は大きいが、穏やかで優しい毛むくじゃらの先生だ。
「先生、森野の体調が悪いようで、倒れてしまったのです」
偽善者の輝の声は心底心配そうな、いい教師を演じている。
この化けの皮を剥いでやりたい。
だが、ムネリンは疑うこともせず、
「そうですか。
それでは白浜先生、森野さんをお願いします」
と残し、再びのしのしと歩き出した。



