あたしは馬鹿だ。 輝に夢中になって、もう一つの大切なものを忘れていた。 目の前には泣きそうに顔を歪めた有希がいて。 その後ろには、魂が抜けたようにあたしたちを見つめる正樹君がいた。 「ゆ……有希!違う!!」 咄嗟に出た、その言葉。 違うことなんて全くない。 有希が目にしたものが全てだ。 後戻り出来ないなら、もっと早く打ち明けるべきだった。 有希の気持ちばかり考えたフリをして自分を守っていたあたしは、ただのペテン師だ。