有希には抜け駆けなんて思われるかもしれない。 いや、あたしの行為は、紛れもなく裏切り行為だ。 有希は、正樹君との関係をあんなに応援してくれたのに…… あたしは、有希に隠し事ばかり作っていく。 最低な女だ。 だけど…… 止められないんだ。 アキのことが気になってしかたがない。 ギギギ…… 蝶番が軋み、部屋の中に光が射し込む。 「いらっしゃい」 聞いたことのある男性の声が聞こえ、あたしの前に黒服の男が現れる。 鼓動は速いが、なぜかあり得ないくらい落ち着いているあたしがいた。