渡されたのは、飴色の木に繊細に表現された薔薇が彫られた手巻き式のオルゴールだった。 高そう…… 「いえ、こんな高価そうなもの、私、買えませんよ」 しがない事務職のOLが簡単に買えるものではないだろう。 「お代は現金でなくて結構です。もしあなたがこれを彼に渡そうと思ったら、このオルゴールにむけて、命を掛ける、と願いを込めて下さい」 その男の言うことは不可解としか言いようがなかった。 「期限はひと月。それまであなたがそれを使わなければ、それは返品して下さい」 意味がわからなかった。