何にせよ、抱えている問題は沢山ある。
立間希美の件が片付いたらもう一度最初から考えてみれば良い。探偵も専門分野だ。
こうしてあれこれと考えている内に、事務所近くにある駅に到着した。
立ったまま寝ている浩子の首根っこを掴んで、引きずるように駅の改札口を出てそのまま事務所へと向かう。
「……ふざけんな」
「起きてんなら自分で歩け。」
「黙れ、減給減給減給。」
ふと声がした方を見ると今にも銃が出てきそうだ。
寝起きの悪さは分かっているが、いつも他のメンバーがなだめている為どうして良いか分からない。
「あんだけで酔うってガキかよ。」
「…何?」
「いや、別に。」
さて、斜め後ろの狂犬は放って置いて、明日は立間希美のパソコンとダミーのパソコンとを入れ替えなければならない。
いつでも潜入は可能だが、一応明日で第一研究室への助っ人期間は終了。橘の事は気になるが、自分の仕事を全うするのが先決だ。黒野も此方の思惑通りに動いてくれれば良いのだが…。
それにしても、黒野は立間と接触し、データを奪った後すぐ彼女を殺すつもりなのだろうが、プライベートまで着いて回るSPの目をどう掻い潜るつもりなのだろう。
皐月が盗聴した限りではSPについて触れていなかった。
もしかすると、彼等の間で二人で会う時はSP禁止、等と決めていたりするのかもしれないが…。
否、八代とドライブに出掛けた時SPは着いて来ていた。店内は無いにしても、店の外では待機させるだろう。
やはり、時間差の毒殺か…。
もしくはサイレンサーの付いた銃だったり…。
仲間がいるなら遠くから狙わせる事も可能だが、とりあえずダミーのパソコンを用意した事で対策済みだ。その場では殺せない。
「………。」
黒野は用が済めばすぐに姿を眩ませるだろう。昨日も浩子に言ったが、奴を野放しにして良いのだろうか?
害は無くとも此方の素性を知られでもしたら……
「………チッ。」
駄目だ。
あまり消極的に考えていては仕事に支障が出る。
今はただ、計画通りに事を運べば良い。
暗い路地裏を進めば見慣れた廃ビルが目の前に建っている。三階の窓から皐月が此方を見下ろしている辺り、事務所に入れば文句を飛ばされるだろう。本当は、店内のチェックと盗聴具合の確認だけで帰る予定だったのだから。
