「死ね」


ハエ叩き構えて、チロチロ出ている舌を己が牙で噛みきってしまえばいいなぁとイメージしつつ、頭蓋骨ごと頭を叩き潰すつもりで、振りかぶり――


「まてまてまてっ、俺だっ、早まるな!」


寸でで止まったのは、愛しいあの人の声が聞こえたから。


低い男らしい声。雑踏の中でも、例え100m先にいようとも、「あ」の発音だけだろうと、愛しい人の声ならば聞き分け聞き取り抱きつきたい。


いつもならば、あーなーたー!とホップステップジャンプで飛び付き、キスの一つもしたいのに。


「いいか、驚くのも無理無いが、落ち着いて聞いてくれ。俺なんだ、“これでも”」


喋る爬虫類。マイクでも飲み込ませたのかしら。ワタクシ大好きらびゅんなお人の声が聞こえてきました。