とりあえず縛られた手足、口に貼られたガムテープを取り除いてやる。

「ぷはあ!」

どれだけ水中に潜っていたんだと言いたくなるような、大きな深呼吸をする冴子。

同時に。

「蓮杖さん助けてっ!この人誘拐犯っっっ!」

省吾を指差して大声を張り上げる冴子。

「しーっ!しーっ!」

耕介は慌てて冴子の口を塞ぐ。

「喚くな!静かに!コイツは犯人じゃねぇ、バッグの中身がお前だって知らなかった、只の運び屋だ!」

冴子の手前、そう言う耕介だったが。

「……」

彼が省吾を見る目は、心から信頼を置いている目ではなかった。

無理もない。

まだ依頼を受けてから数時間しか経っていないのだから。