必然トラップ【おまけ追加】

「はー……」



ディスプレイが暗くなったスマホを制服のポケットにつっこんで、俺は深々とため息を吐いた。

屋上のフェンスにもたれながら、見事な秋晴れの空を見上げる。


ああ、いよいよ、か。

いやまだ、アイツが間違いなくここに来るって決まったわけではないけど。

……つーか、沢田サンって誰だ。

なんか俺の知らんうちに、この計画に関わってる人が増えてる気がすんだが……。

絶対これ、俺が協力頼んだヤツが勝手に吹聴してやがんな。……おぉう、恥ず……。

俺は今後の学校生活のことを思って、ひとり頭を抱えながら悶える。


……けど。

なんとかして、アイツをオトしたくて。そして精一杯考えて仕掛けた“罠”。

なんだかんだで、ノリノリに協力してくれた悪友たちのことだ。メールの通り、きっと上手くやってくれたのだろう。



「……うし!」



自分に気合いを入れるように、ペチンと両頬を叩く。

──1年生の頃からずっと、秘めていた気持ち。

空は眩しいくらいの、青空で。まさにこんな日は、一世一代の告白ってやつに打ってつけじゃないか。


自分を鼓舞したところで、背後にある屋上の扉がキィッと音をたてた。

ゆっくり後ろを振り返ると、そこにはぽかんとした表情でこちらを見つめるアイツの姿。

そんな間抜けなカオですら、かわいいと思う、なんて。


……ああ、来た。来て、くれた。

俺は自然と、笑みを浮かべた──。







2013/08/16