「は?・・・結婚!?」


朝っぱらから矢野の大きな声が部屋に響いた。
ここは矢野のデスクがある心臓内科の部屋で。
僕は一応矢野に退院後のあいの様子を報告に来ていた。


「また急展開だな。お前ら付き合い出してまだ数ヶ月だよな?」


「だから?」


僕の目の前で大袈裟に驚いている矢野に僕は平然として聞き返した。


付き合ってる期間の問題じゃない。


それにあいと僕の関係は実際は“数ヶ月”なんて単位じゃ図れない。


矢野も僕の言いたいことを察したのか、少し微妙な顔をながら頭を掻いた。


「あぁ・・・お前らはそのずっと前から繋がってたんだっけ」


「そういうこと」


やっぱり平然と答える僕に矢野は苦笑いした。


矢野は僕から聞いた前世のことを否定したりしないけれど、完全に受け入れきれてないのかもしれない。


まあ、無理もないと思う。


矢野はかなり現実主義なヤツだし、前世の記憶だとか生まれ変わりと言われて『はい、そうですか』なんて納得しきれない方が当然だろう。


それでも僕の話もあいの存在も否定しないで受け入れようとしてくれているのは、矢野の優しさとか人間性からくるんだと思う。


矢野はそういう意味でもやっぱりいいヤツだ。


なんて絶対本人には言わないけど。