トントントンとノックするのもやっぱり圭さんで。
診察室へ先に入ったのも圭さん。


先週とまったく同じ状況に、診察室の中で苦笑いしている矢野先生がいた。


「おはよう、あいちゃん」


今日の矢野先生は圭さんのことは何も言わない。
圭さんが一緒だということがわかっていたのか、矢野先生の前にはすでに椅子が2脚用意されていた。


「どうぞ」


と矢野先生に言われて、私は「はい」と答えながら椅子に座る。
圭さんはもう一つの椅子をひいて、私の隣ではなく、矢野先生と私の間くらいの位置に座った。


「早速だけど、結果から言うとあいちゃんは“不整脈”の兆候がある」


「・・・不整脈ですか?」


「そう。以前にそういうこと言われたことはない?」


矢野先生が口にした“不整脈”という言葉を確か、私は子供の頃聞いたことがあった。
小学校での心電図検査で、それらしいことを言われたような記憶があることを思い出した。


「・・・確か、小学校の頃に軽い不整脈があるようなことを言われたかもしれません・・・あんまりはっきり覚えてないんですけど」


「そっか。たぶんその時は“それらしい”ってくらいのことだったんだろうね。今回はそれよりははっきりと兆候が出ているから、診断としては“不整脈”ってことになる」


「・・・はい」


あまり病気のことに詳しくないから、“不整脈”がどういうものかよくわからなくて、私は矢野先生の言葉に頷くだけしかできなかった。