カケル君の姿を一目見たくて、夜が来るのが待ち遠しかった。
日がくれると、コウタがゼリーを持ってまたやってきた。
あたしはゼリーを受けとると、机の椅子に腰掛けた。
そしてまじまじとコウタを見つめた。
コウタはベッドに座った。
カケル君とコウタって兄弟なのにあんまり似てない。
カケル君は二重瞼だけどコウタは一重瞼だし。
カケル君は口が小さくてコウタは大きい。
カケル君はお母さん似でコウタはお父さん似。
でもやっぱり顔の雰囲気が似てる。
カケル君じゃない。この顔はカケル君じゃないの。
「そんなに見るな。悪かったなカケルじゃなくて。」
コウタに言われた。
考えてることがわかるのかな。
あたしは窓の外に目をやった。
カケル君はまだ仕事から帰ってない。
「寝てなくていいのかよ。」
「もう平気。病気じゃないし。ゼリーありがとう。コウタ食べる?」
「いらね。手ぶらじゃ来ずらいから。」
コウタは自分で言って照れてる。そういう感じ出されると調子狂う。
「さくらはさ、付き合ったことある?」
突然のコウタから質問。
「え、ないないない。」
「え、じゃあキスとかしたことないの?」
キスという言葉に反応して顔が赤くなったのがわかった。
「ないね。」
先にコウタに言われてしまった。
コウタはニヤリと笑った。
「まずいかな?19なのに。みんなしてる?」
あたしは不安気に聞いた。ちょっと気になった。
「わからん。してるやつもいるししてないやつもいるから。兄ちゃんは何もしてないんだな。」
「カケル君にはこの間キスしてって言ったのに断られた。」
コウタは眉間にシワをよせた。
「じゃ俺がしてやる!」
と言って立ち上がりあたしにじりじり詰め寄ってきた。
あたしは窓を背に逃げ場をなくした。
「いや。ムリムリムリ、本当ちょっとやめて。」
あたしが言って、コウタはニヤリと笑うとあたしを窓から離し自分が窓際に立った。
外を見ている。
カケル君のエンジン音が聞こえた。
コウタと目が合った。
「兄ちゃん帰ってきたな。」
あたしはカケル君を見たかったけど、コウタに遠慮して窓まで行けなかった。
コウタはあたしにカケル君を見せないつもりかも。

