「〜〜〜バカかオマエは!!何故避けない!」
だから、そう、言われても。
梨乃は黙って、唇を噛んだ。
オトコノヒトは、みんなキライ。
さっさと私の上から降りて、立ち去ってくれれば良いのに…
「…オマエ…」
黙っている梨乃の背をを起こすと、男はマジマジと梨乃の顔を見つめ…
「オマエ、泣いてるのか」
と、言って、梨乃の涙を左手で拭った。
「……!」
客でもない見ず知らずの男の馴れ馴れしい行為に、梨乃は眉をしかめた。
なんなのだ、この男は。横暴で、馴れ馴れしくて。蓮實とはエライ違いだ。
梨乃は思わず、自分が唯一愛し、もっとも憎むべき異性…蓮實と目の前にいる男を比べてしまった。
腰を降ろしたままなのでハッキリとは言えないが、蓮實より幾分高い身長。長い腕。細く、男のクセに綺麗な指。普段穏やかな蓮實の瞳と比べると、涼やかなのに、ギラギラとした強い視線。色素の薄い瞳は、射抜くように梨乃を見つめている…
なんだか、とても…
「綺麗な顔だな」
「…!」
自分の思考と同じ事を言われて、梨乃はビクッと身体を震わせた。
驚いた。
自分の心の中を、見透かされたのかと思った……


