何かあった時、すぐに行動出来るように作業着で寝ていたので、廊下を歩いていても寒くはない。

 月明かりだけが差し込む廊下の歩いていると、不思議な心地になる。

白いリノリウムの床に、薄い氷が張っているように見えた。

 寒さなど感じないのに、手がふるえた。


「ミラン……」


 暗がりが僕の名を呼ぶ。

 ツガンとデジクが眠る部屋の前の暗がりが、まるで穴が開いたように深い。

 その穴は、きっと地獄に続いている。