亡きがらだけがくるくると地球を回り続けている。

 体がそんな状態で、魂は天国に行けるものなのだろうか?

 天国……

 空の上に天国はない。

 あるのは宇宙だけ。

 それでも僕は信じてる。

 きっとクドリャフカが天国で幸せになっていると……

 神様。

 もしも本当に神様という存在があるのなら、どうかクドリャフカに優しい手を差し延べてやってください。

 僕のこの汚れた手は、クドリャフカの命を抱きしめてあげられなかった。

 一人ぼっちで、もう二度と帰れない旅に行かせてしまった。

 クドリャフカが宇宙へ行くことにどれだけの意味があったのか。

 クドリャフカがあの日宇宙へ行かなかければ、大国との宇宙開発競争に火はつかなかった。

 宇宙開発の過程で生まれるあらゆる技術は世界を進歩させ、人工衛星の持つ可能性は果てしない。

 このまま行けば、人類が月へ火星へ太陽系の外へ行くことさえ夢ではなくなるだろう。

 少なくとも、近い将来月へ到達するぐらいの勢いがあった。

 その勢いは、クドリャフカが生み出した物だった。


「でも、だからと言って……割り切れないよ」


 クドリャフカを宇宙へ行かせたことは、人類の発展を思えば正しいことなのかもしれない。

 けれど、この胸の痛みは人間として真っ当なことだと僕は信じてる。

 君の死を悲しめる人間でよかった。

 僕は、君が本当に好きだったんだよ、クドリャフカ。


「ごめんね」


 涙が目尻からこぼれ落ち、砂に染み込んだ。


 そして、その時――……



 星が流れた。