一瞬、自分が今何を言われているのかわからなかった。



「……あのー、きせーじじつ、とは……」

「なんだ、はっきり言わないとわからないのか? 既成事実とはつまり、まあこの場合はセッ」

「うわあああああああ!!」



なんだかとんでもない単語がシツチョーの口から飛び出そうだったので、慌ててそれをさえぎった。

よく見ればシツチョーはいつもの白衣を身につけておらず、普段適度に緩くつけているネクタイも外し、ワイシャツの襟元はくつろげられていて。

……えっと、やる気十分?



「それじゃあ、」

「ひゃあっ、ちょ、待って待って待って」



再びブラウスのボタンを外しにかかろうとしたシツチョーの右手を、がっしりと掴んで止める。

なんかもうわたし、涙目だ。

シツチョーは若干ムッとした表情で、わたしと目を合わせた。



「……なんだ」

「なんだ、って、えっと、シツチョー……」



消え入りそうなわたしの言葉に、ふっとシツチョーが、表情を和らげる。



「今は、名前呼びでいい」

「え? あ、あの……」

「ん?」

「どうして、み、帝先輩……こんなこと、してるんですか?」



どくんどくん、大きく鳴る鼓動を感じながら言った、その問いに。

帝先輩は不機嫌そうに顔を歪め、答えた。