ガチャガチャと焦りながら、必要以上に音を立てて鍵を開けると、リビングでは電話の音がけたたましく鳴っていた。
その音はまるで、“早く出ろやっ! どあほっ!!”と繰り返し怒鳴られているようにさえ聞こえる。
「うっわー!! ヤバイ、ヤバイッ」
あたしは、履いていた靴を脱ぎ散らかし、サッカー選手のスライディング並に電話機の前に滑り込んで受話器を取る。
「もしもしっ」
焦りと十五階までの距離を急いだせいで、ぜいぜいしている呼吸を必死に誤魔化した。
『おっそいわっ!』
しかし、誤魔化したところで、遅くなったことには変わりがない。
案の定、水上さんは、大変ご立腹だ。
「す、すみませんっ! あの後すぐタクシーに乗ったんですよ。でも、道が混んでいて、運転手さんにも飛ばすよういったんですけど、全然ダメで……」
『もう、ええ。わかった』