帰り道、図書館をでるともう外は真っ暗。
私は徒歩で、海くんは自転車をひきながら、坂道をくだる。


「海くん!今日はありがとー!助かった!」
「いや、俺も楽しかった!」
そう言って笑う。
やっぱり笑顔が可愛いなぁ。


「じゃあ私はここで‥」


「え?送るよ。」

「えっ!?いやそんな‥とんでもない!大丈夫です!彼氏彼女じゃあるまいし」

「何言ってんの。彼氏じゃなくても女の子は家まで送るもんだって。」

またキュンとくる。ドキドキして胸が苦しい。
共学ってそういうもんなの‥?
女子校の私がよくわからない世界。

私が黙っていると、顔を覗き込まれる。
「どうしたの?」

「あっ、いや、あの!そういう女の子扱いに慣れてないっていうかなんていうか‥ほんとなんかもう私がはずかしいので大丈夫です。」

わけわからないことを言っている自分。
あぁもう!しっかりしろ私!

「いや、俺が心配だから。ほら、家どっち?」

「あ‥右に曲がって、まっすぐ‥」
つい答えてしまう。


隣を歩く海くんの横顔をみる。
この人、モテるだろうなぁ‥

「あのさ、海くんって彼女いるの‥?」
恐るおそる尋ねてみる。

「ははっ、急にきたなー。今はいないよ。」
そう笑いながら答える海くん。
少し安心している自分がいる。

「なっちゃんは?」

「いや、女子校だもん、とんでもない!高校入ってから1人も付き合ってないです‥」

「そうなの?可愛いしモテそうなのにー。」
「は?私が?」

「うん。」
真剣な顔で頷く海くん。

「いやいや!そんなこと‥」

「そんなことあるよ。女子校ってなんかもったいないねー‥」

「あ、でもたしかに、クラスに可愛い子たくさんいるけど皆彼氏とかいないっぽいかも‥」

山田さんの顔が思い浮かぶ。
ぱっちり二重で細くて白くてあんなに可愛いのに彼氏いないもんなぁ‥