「殺したいほど嫌いになってくれましたか?」


よく通る声が、私の隣から発せられる。彼が座る振動が体に緊張を付属させた。


「それとも、好きになってくれました?」


髪に触れたので、思わず払った。そうして平手打ち。女としてあるまじき行為でも、形振り構っていられない。


「ふざけてないで、いい加減出してよ……っ」


「こっちは真面目、なんですがね」


片や怒り、片や笑い。相反する感情は、どちらも折れない証だ。


「あなたを、愛しています」


だからこそ、愛してもらいたい。そんな片思いがした“悪あがき”。


「そうして、愛してくれないならば、殺してほしいのです」


愛と死を直結させる彼は理解不能だった。