「なんで……」


こんなことになったのだろうか。


彼の好意は知っていた。知っていたからこそ、断った。


私は彼と同じ気持ちになれない。彼が諦めてくれるよう、距離を置いたのに。


あくる日、彼は私にナイフを贈りつけてきた。


何の意味かは彼自身から聞き、ナイフは今でも私の手元にある。


彼に何もかもを奪われた私の、唯一の所有物。


居場所を、友人を、自由を、ここに閉じ込められた時点で奪われた。


全ては、彼の“願望”を叶えるために。


「……」


鉄の扉が開く。仰々しい音に肩を跳ねさせるも、すぐに“彼”だと気づき、視線を外す。


彼に顔を見せないよう、膝を抱え、顔を埋めさせる。