いきなり葉子は身を乗り出し、テーブルに置かれた麻紀の右手をぎゅっと握った。


(ひっ……!)


その手はやたらカサついていて、麻紀はまた、悲鳴をあげそうになった。



「戻ってきて欲しいのよ…麻紀ちゃんに…」


葉子は、縋る目で麻紀を見詰めた。



(はああっ⁈)


麻紀は即座に、葉子の手を振り払った。


「そんなこと今更出来るわけないでしょう。
あれから2年も経って、私には私の今の生活があるんだから。

それに、お義母さんも真和も変わりっこないですって。

お義母さん、子供達を立派に育てるって、家裁でタンカ切ったじゃないですか?それですんなり父親の方が親権とれたんじゃない!」


「麻紀ちゃんたら…年寄りにそんなキツイこと言わないでよ…」


(年寄りだって。
都合のいい時だけ、年寄りを装うんだから)


麻紀は鼻白む。


葉子の淀んだ妖怪みたいな目。
はっきり言って大嫌いだ。


今更、戻るなんてありえない。


「子供達、部屋に戻ってるかもしれない。もう行かなきゃ。
お義母さん、お寿司、御馳走様でした。
お達者でね。
真和にも飲み過ぎないように言っておいて下さいね」


麻紀は、自分の手提げバッグを腕に掛けると、葉子の顔を見ずに立ち上がった。