そして、それは見事的中するーーー


葉子は茶をひと口啜ってから、低い声で言った。



「相変わらず、不味いお茶だね」


は?と呆気にとられる麻紀に葉子は獲物を射るような目を向け、矢を放った。


「あんた、一体、夜中に出掛けてなにしてんの?
あたし、何度もあんたの車、見たんだけど」


夜中の11時半に風呂場の足拭きマットを二階のベランダで干していた葉子は、息子の嫁の軽自動車が、家の前の道を通り過ぎて行ったのを偶然に目撃していた。


確かにあのピンクの軽は、麻紀のものだーーー30半ばにもなって、あんな色を選ぶなんてとケチをつけずにはいられなかったーー葉子はすぐに直感する。



嫁は浮気をしているのではないか?


それから、2時間ドラマの大好きな葉子の探偵ごっこが始まる。


葉子の中でBGMはなぜか「踊る大捜査線」のテーマ曲なのだった。


息子・真和の夜勤の日をさりげなくチェックし、その日、夜11時に歩いて15分程の息子の家が見える角に闇夜に紛れ、立つ。


すると葉子の読み通り、麻紀の軽自動車は、電柱の脇の葉子の目の前をややスピードを出して通り過ぎて行くのだ。