あれからお姉ちゃんの声って聞いてないな。 たまにかかってくるお母さんからの電話にお姉ちゃんの話題が出たこともない。 元気かな。 「…お姉ちゃ…」 目を開いた先に見えたのは、遼。お姉ちゃんじゃなくて遼。 「な、なんですか」 「いや、睫毛長いなって」 「あ、はい…」 あ、睫毛ね。いや睫毛じゃなくて。 ちゃんと毛布が掛かっていて、遼がやってくれたんだと考える。 ぼーっとした頭でテーブルの上の広がっている教科書を見た。 「今何時?」 「十一時」 「帰る!」 一瞬にして頭が冴えた。