遼の家に来たの、久しぶり。

最初に来た時とは特に何も変わらず、敢えて言えばまたしても創作に没頭していたようで。


「…シャワー浴びてくる」


眠たげな声でフラフラ歩いて行ってしまう。

そして、香るブランド物の香水に、思わず背中を引き止めた。


「のぞみさん、来た?」

「は?」

「来たの?」

「いや、母親なら来たけど」


そう言って何事もないようにこっちに背中を向ける。
お母さんですか…!

思い込みとは酷いもので。勝手にこの香りイコールのぞみさんにしている自分がいた。