サンドリヨンは微笑まない


挨拶まわりに行っていたんだろう。


「え、ちょっと待ってよ。社長!」

「あたし、クビになったので。本当にありがとうございました、岸田さんのことは絶対に忘れません」


その言葉に後ろにいた子も「えっ」と声を上げた。


「いやそれは嬉しいけど、でもちょっと待って」

「オーディション、沢山持ってきてもらったのに、本当にすみません」

「ホタル」


扉を開けて出た。

新入りの子がにやついていたので、しっかり挑発するような笑みを返しておいた。

将来、出るであろうあなたのグラビア雑誌に敬意を表して。