「ふぁあ……」


欠伸をひとつ溢す、ひとりの男性。

縁側に腰を下ろし、ぽかぽかと日溜まりのよい天気に眠気を誘われていた。


少し癖のある長髪は、老人のように真っ白である。だが、顔つきからしてまだ二十代後半にも差し掛かっていない若い男のようだ。


その細い体より一回り大きい、だぼだぼとした藍色の着物は、帯ではなく黒色の数珠やら異国の『たあばん』という白布が帯代わりを果たしている。


下駄の鼻緒に足の指先をひっかけ、ぶらぶら揺らして暇を主張する其の男。


名を、【縁】(えん)というそうな。