兄と弟。

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――放課後。
「先輩!」
学校の階段をおりる途中で上から声をかけられる。
この声はあの双子達ではない。
どうやら声をかけたのは一年で眼鏡をかけた大人しそうな女の子のようだ。
「お前の知り合い?」
小声でそう聞くと、野沢は首を横にふった。
ひとまず階段を上り、女の子との所へ向かう。
女の子は恥ずかしそうにスカートを掴んで俯いていた。
「あの、……その、ちょっと……いいですか?野沢先輩」
上目遣い気味に上げられた目は、野沢に向けられていた。
あの様子では何か伝えたいことがあるのだろう。
――がんばれ、女の子。
俺は静かにその場を立ち去った。
あの様子じゃ告白しかないだろうと思いながら、野沢はどうするんだろうとも思った。
それくらい長い間、俺は待っていた。
仕方ない、後でメールでも打っておくか。
先に帰ろうと立ち上がると、丁度息を切らして走ってきた野沢が俺に気づいてベンチのところまで来て息を整えている。
「つ、っかれた。くるし……。はぁー……。畜生……さすがの俺もこれは辛い」
苦しそうな顔がより増して泣きそうな顔をしているのが見えた。
「どうしたんだ」
「……」
野沢は何かを呟く。俺は何を言っているのか聞き取ることは出来なかった。
「?……何か言ったか?」
「なんでもない」
そう言って悲しく笑う野沢がとても似合わなかった。