絶滅危惧種『ヒト』

直樹はすぐに井上に電話をかけたが、井上は出てくれない。


――まずいことになった。


直樹は直感的にそう思った。


上杉は医師である。感染症の疑いのある患者に対応したとき、それなりのことはしたはずである。


なのに、その上杉が感染したのは、いったいどういうことなのか?

直接的な接触感染じゃなくても、感染者に触れた手で、口の辺りを触れば感染することはある。


だが、上杉はプロの医師である。そんなことは百も承知のはずなのだ。


さらにまずいことに、上杉は外来の診察で、毎日何人もの患者を診察している。


直樹が考え込み始めたとき、携帯電話が鳴った。


見ると井上からである。すぐに通話ボタンを押した。


「もしもし井上大変だ!」


「え?」


「外来の診察で、最初に小林孝明に対応した医師が発病して死んだ」


「そうか……」


もっと驚くかと思ったのに、井上の反応はイマイチである。


「どうかしたのか?」


直樹は不安になって聞いた。