絶滅危惧種『ヒト』

小山健介は大阪営業所への出張の為、東京駅を6時に出発する、のぞみ1号に乗り込んでいた。


新大阪駅に到着するのは、8時半頃。

二時間半も時間を持て余すので、軽く一眠りしようと目を閉じるのだが、どうも胃腸の様子が気になって眠れない。

ずっと違和感を感じるのである。

過去に経験したことのない、何とも気持ちの悪い感覚。

結局眠れないまま、まもなく名古屋を迎えるところで、気持ち悪さがピークを迎えた。


とはいえ、こんなところで新幹線を停めてくれとも言えない。


健介はトイレに行って、吐こうと思った。

変な物を食べた心当たりはないが、吐けば少しはスッキリするかもしれないと思ったのだ。


健介が立ち上がろうと、体勢を起こしたとき、今までにない気持ち悪さが襲ってきた。


とても立ち上がることが出来そうにない。


そのまま動けずに、しばらくジッとしていると、ついに身体の中から何かが込上げてきた。


「うげぇええええ」


健介はそのままそれを吐き出すと、グッタリとして動かなくなる。


突然の異臭の発生に、乗客たちが騒ぎ始め、すぐに車掌が駆け寄って来たが、すでに健介は絶命していた。


健介の遺体は名古屋駅で下ろされたが、新幹線はそのまま北九州を目指して走り去る。


その車内には、多くの乗客たちと共に、莫大な数の悪魔たちが存在していることに、誰も気がつかず、

京都、新大阪、新神戸、岡山、福山、広島、小倉と、乗客が乗り降りする度に、乗客たちにとりついた悪魔たちは、それぞれの町へと降り立っていった。