絶滅危惧種『ヒト』

孝明が発病してから半年以上の月日が流れた。


どうやら生き残った全員に氷の細菌が行き渡ったらしく、最近では発病する者はいなくなったようである。

聖人と梓は、並んで公園を散歩していた。


「ようやく終焉したみたいだな」


「なら、良いんだけどね」


話しかけた聖人に、梓が答える。


「結局世界の人口って、どれくらいになったんだろう」


「さぁ、この前は二十億人って言ってたけど、何せニュースとか観ても、ちんぷんかんぷんなんだもん」


未だに英語が分からない梓が嘆いた。


「そりゃそうだよな」


「ねぇ聖人」


「ん?」


「私たちが死んじゃったら、誰も日本語を使わなくなっちゃうのかな?」


「ああ、そうだな。日本人って、いったい何人生き残ってるんだろう? 日本国内は全滅でも、世界中の色んなところに日本人はいたはずだから……」


聖人は空を見上げた。


「もし、その人たちが生きていて、その子供たちが引き継いでくれなかったら、日本語は途絶えちゃうのね」


梓が淋しそうな顔をする。


「そうだな。少なくともこの町には、俺の家族と梓の家族しか、日本人はいないんだし」


「そうだよね」


「前にさぁ、うちの母さんが、生前に父さんがよく話してた、ライオンが絶滅危惧種になってるって話だけど、覚えてる?」


「ああ、うん」


「なんかさぁ、絶滅危惧種って言葉、どこかで遠い世界の言葉みたいに感じてたけど、今じゃリアルに日本人が絶滅危惧種だよな」


「そうだね……」


梓は暗い顔をした。