絶滅危惧種『ヒト』

「桜小路くん。申し訳ないが、今は先を急がないか?」


「え、ええ……」


聖人は頷いて、バイクの後ろに跨り直した。


先に東城医大病院に向かっていた井上が、どうしてここで事故に巻き込まれたのか分からないが、

これは聖人だけでなく、あの外国人研究者たちにとっても痛手だと思った。


井上は厚生労働省の人間で、しかも今回の件に深く携わっている。

つまり聖人とあの外国人研究者たち、そして日本政府を繋ぐポストにあって、南極の氷を口にしている数少ない一人だったのだ。


自宅のある国分寺に近づくほどに、路上に倒れている人の数が増える。


梓の親友、藤田朋美が教室で倒れたのが火曜日。


あれからたった5日で、ここまで事態が進行するなんて、聖人はまったく想像もしていなかった。


もちろんそれは聖人だけではなく、全てにおいて危機意識の薄い日本人全員に言えることなのだろう。

かつて江戸時代に、コレラ菌が猛威をふるった時のように、過去の悲劇を教訓として、早急に対応していたなら、

もしかしたらこんな短時間に、ここまで酷い状態にはならなかったかもしれない。


もっとも、今更そこを嘆いても、どうにもならないことは分かっている。

日本は……本当にどうなってしまうのだろう……。

聖人は言い知れぬ不安に襲われていた。