絶滅危惧種『ヒト』

梓の父親の運転する、原付バイクの後ろに乗り込むと、一路聖人の自宅を目指す。


渋谷からここに来るまでにも、至るところに人が倒れていたが、最初に発病患者が出たこの病院や、自分たちの住んでいる町に向かうほど、酷い状態なのが分かる。


乗り捨てられた車が道を埋め尽くし、右を見ても左を見ても誰かが倒れていた。


その意図は分からないが、梓の父親が大通りから中道にルートを変えた。


さっきから歩いている人を一人も見ていない。

生きている者はいないのか、それとも家の中にこもっているのか、どこかを目指して駅にでも向かったのかは分からない。



「あっ!」


目の前で建物に突っ込んで停まっている車。


そのすぐ近くに倒れている男。


その横を通り過ぎていく聖人の乗ったバイク。


聖人は目を見開いて、倒れた男を見つめた。


――い、の、う、え、さん……。


梓の父にしがみついている手がガクガクと震える。


彰洋もそれに気がついた。


「どうかしたかい?」


バイクを停めて振り返る。


聖人の手の震えが大きくなっていた。


「おい。大丈夫か?」


「友達が……」


「え?」


「兄の友達が……」


彰洋はかなり後ろに倒れている男性のほうを見る。


「こんなところで……何で……」


聖人は胸が熱くなって目を閉じた。