絶滅危惧種『ヒト』

目を閉じているけど、すぐそこに聖人の息遣いを感じる。


梓にとってのファーストキスは、思い描いていたロマンチックなシチュエーションではなかったけれど、今もの凄く幸せな気持ちに包まれていた。


唇が離れ、目を開けると、聖人と視線がぶつかる。


もの凄く恥ずかしくて、もの凄く嬉しくて、もの凄く心臓がドキドキしていた。


「梓……大好きだよ」


「私も、私も聖人のこと大好き」


もう一度唇が重なる。ほんのつかの間の幸せなひととき。

ほんの十数秒だけど、梓は幸せを満喫した。


ずっと手を繋いだまま、二人は売店にやってきた。


商品は陳列されているけど、店員はいない。

お金をどうするか迷ったけど、勝手にレジを開けるわけにもいかないので、

そこにあったメモ用紙に、感染症学科の桜小路直樹宛で購入金額を書き込んでおくことにした。


外国人のドクターたちの嗜好が分からないから、少し多めに色々と買い込み、研究室に戻ることにした。


「ねぇ聖人」


「ん?」


「お兄様も亡くなって、もうどうにもならないって思ってたけど、アメリカの偉い人たちが来てくれたから、なんか希望が持てるよね」


「そうだな……。正直なところこれでダメなら、もう……」


聖人は目を伏せる。


「ねぇ聖人」


「ん?」


「後で二人きりになりたいんだけど」


「え?」


「ここって誰もいないみたいだし、空いてるベッドとかあるよね?」


「それって……」


少し驚いた顔で見つめる聖人に向かって、梓は頷いた。