絶滅危惧種『ヒト』

《ケビン。スマンが思い出話は後にしてくれんか?》


ブライアンが割って入った。


《ああ、そうだな。スマンスマン》


すぐにケビンが謝った。


《今の彼の話しから、細菌は消化器官を目指す特性があることが分かった。飛沫感染の場合、おそらく胃液がその侵攻を遅らせている……》



《そうだな》


《ということは、胃液とか胃酸とかが、細菌に対して有効なんじゃないかな?》


《おお、なるほど。感染から発病までは、おおよそ三日から五日。この間に感染者の体内に侵入した細菌の数は、かなりのものだろう。

その侵攻を遅らせているということは、死なないと言われている細菌も、実はかなり死んでいる可能性が高いな》


《そうだな。すぐにでも実験したいところだな。ここには医師がいないらしいが、必要な設備はあるだろう》


ケビンが病院の建物を見上げる。


《私の息子が使っていた研究室があるわ》


綾乃が申し出た。


《そうか。それは助かる。我々は一刻も早く治療法を見つけなきゃならないからね。

なんせ人類を救うなんて大儀の前に、まず間違いなく感染してしまっているだろうはずの、自分を助ける必要があるんだから》


ケビンは心の中の焦りとは裏腹に、満面の笑みを浮かべてジョークを言った。


「梓ちゃんごめんなさい。彼らを感染症学科に案内しなきゃならなくなったの。すぐには帰れないんだけど」


「え、ええ。別に謝らないで下さい」

梓は外国人と普通に会話をしている綾乃に対して、最早尊敬の念を抱いていたから、謝られて逆に恐縮した。