絶滅危惧種『ヒト』

《ちょっとケビン! 何てことを言うのよ!》


綾乃が少し慌てて口をはさむ。



《なんだい。決して嘘じゃないだろ? もしあの時君が選んだのが、ノボルじゃなくて僕だったら、彼は僕の息子だったのに》


《もう、バカ!》


綾乃が照れたように言った。


実はこの会話も、何とかヒアリング出来たから、聖人は驚いて母の顔を見る。


人に歴史ありとは、良く言ったものである。


年甲斐もなく少し恥らう母。


そこには、聖人の知らない時代が見え隠れしていた。


全くヒアリングが出来ない梓にとっては、チンプンカンプンである。


「母さんどういうこと?」


聖人は我慢出来なくて、少し強い口調で聞いた。


「昔ね。まだ学生の頃に、青年海外協力隊に参加したことがあったの」


「え?」


裕福な家庭の箱入りお嬢様育ちだと思っていた母が、青年海外協力隊とは……。


「ところが参加をしてみたものの、実は派遣先の勤務が希望するものじゃなかったの」


「えっ……それってワガママ?」


「違うわよ。日本政府ってね。別に協力の必要のないような安全な国ばかりに派遣させて、本当に協力が必要な国には行かせないの」


「そうなの?」


「たまたま私の行った赴任先で、知り合ったのがケビンでね。

色々そんなことを相談しているうちに、危険を伴うけど、本当に助けを待っている地域があるから、そういうNPO法人に参加しないかって誘われて……」


お嬢様育ちとは思えぬ発言に、聖人は思わずツバを飲み込む。


「思い切ってそれに参加して、行った先がアフリカだったんだけど……。そこでアナタのお父さんと出会ったの」


「え?」


「まぁ、言うなれば、ケビンが私とお父さんの愛のキューピッドだったてことね」


「へぇ~」


聖人は生まれて初めて、両親の馴れ初めを知り、素直に感動した。