人影が近づいてくるに従って、それが少し年配の外国人の一団であることに気がついた。

恰幅の良い男性が三人と、小柄な中年女性が一人。


「外人さんだね」


梓が聖人を見る。


「だな……」


向こうもこちらを認識したらしく、互いの顔が識別出来るほど近づいたところで、会釈をしてきた。


通常の外来診察患者にしては、何となく雰囲気が物々しい。


「ヘロゥ」


突然英語で話しかけられたから、英語が苦手な梓は、聖人の後ろに隠れた。



「ハ、ハロー」


英語の成績がクラスで一番の聖人ではあるが、外国人との英会話の経験はないから、緊張で声が上擦る。


そのとき……


流暢な英語が聖人の隣から聞こえた。


聖人と梓は目を丸くする。


何と綾乃が、四人の外国人を相手に会話を始めたのだ。


これは聖人にとって、腰を抜かすほどの驚きだった。


聖人はずっと母のことを、お嬢様育ちの家庭婦人で、家事以外のことは何も出来ないと思っていたのだ。


事実綾乃は、そこそこの上流階級の家庭の出身である。


それにしても……17年も息子をしていたというのに、母の意外な一面を見て、聖人はただ呆然と固まっていた。


流暢な英語で会話をする母。


聖人は生まれて初めて、母親のことをカッコイイと思った。