絶滅危惧種『ヒト』

このまま泣いてしまったら、しばらく動けなくなってしまう。

そう思って聖人は、必死で悲しみを堪え、溢れてくる涙を拭った。


「いいか梓。せーのーで、兄ちゃんの足を持ちあげてくれ」



「うん。分かった」


「行くぞ。せーーのーー」


「うん」


二人は直樹の遺体を抱え上げ、ストレッチャーの上に寝かせる。


「で、どうするの?」


ストレッチャーを引張り始めた聖人に向かって、梓が聞いた。


「どうするって?」


「だから、お兄様の遺体をよ」


「う〜〜〜〜ん。どうするって聞かれてもなぁ……。町中がこんな状態じゃ、普通の葬式も出来ないだろうし」


聖人が前で、ストレッチャーを引張りながら答える。


「だよね」


梓は後ろから押しながら頷いた。


「だからって、あんなところに放ったらかしには出来ないじゃん」


「うん」


聖人の引張るストレッチャーが、綾乃の前まで来る。


「ぁぁあああ直樹ぃいい〜〜〜〜」


綾乃はストレッチャーの上に寝かされた息子にしがみついて、泣き出してしまった。


「お母様……」


梓はその姿を見て、激しく胸が痛んだ。