絶滅危惧種『ヒト』

直樹はそのまま一階のロビーを目指す。


再度エレベーターに乗り込み、一階のボタンを押した。


エレベーターのドアがゆっくりと閉まっていく。


次にこのドアが開いた瞬間の、目の前の光景を想像すると、思わず寒気がする。


そして、一階に着いたエレベーターのドアが開いた瞬間、そこには直樹の想像通りの光景が広がっていた。


何人……。いや、何十人という人が倒れている。

ただ、いつもの病院にいる人数からすれば、その数は少なく、そのくせ生きて動いている者は、一人も見当たらなかった。


直樹はそのまま入院患者の病棟に向かい、エレベーターに乗り込む。

行き先は何階でも良かったのだが、ふと窓から外の景色が見たいと思い、九階を選択した。


エレベーターを降りてすぐにナースステーションがあるのだが、その中にも数人の看護師の遺体が転がっている。


直樹は一番近い患者の部屋に入ってみた。


やはりその部屋の患者は死んでいる。


直樹はそのまま窓に向かい、外の景色を眺めた。


「マジかよ」


思わず声が出る。


九階の窓から見えるその一面に、一体どれくらいの人が倒れているのだろう。


ただ……生きて動いている者も大勢いた。

彼らはまだ感染していなかった者たちなのだろう。

でも……おそらく今日で感染してしまったのではないだろうか。

ならば彼らの寿命は後四日ほどということになる。


そこで直樹はふと思った。


俺はなぜ発病しないのだ……と。