絶滅危惧種『ヒト』

「自転車はどうかな?」


レンタサイクルなら歩くより数倍早く帰れる。


「え〜〜〜」


すぐに綾乃が苦情を言った。


「じゃあどうしろって言うんだよ?」


「だいたいレンタサイクルなんて借りたら、また返しに来なきゃならないのよ」


「そりゃあそうだけど……たぶん」



「たぶん何よ?」


綾乃が眉根を寄せる。



「この辺りの人はみんな死んじゃって、それどころじゃなくなるんじゃないかな……」


「ちょっと、嫌なこと言わないでよ」


綾乃は聖人を睨んだけど、その可能性は高いと思った。


それよりも自分たちが死んでしまって、返しにこれなくなる可能性だって高い。


「じゃあどうするんだよ。他に何かあるのかよ?」



「そんなこと言われても……」


綾乃は返答に詰まった。


「どうしますお母様? 私も自転車がいいんじゃないのかって思いますけど」


聖人に対しては厳しく言う綾乃だが、こと梓には甘い。


「そうね。梓ちゃんがそう言うなら、そうしましょうか」


「じゃあちょっと待って」


聖人はスマートフォンを取り出すと、渋谷駅周辺のレンタサイクルショップを検索した。


最寄は桜丘町で、歩いて5分ほどのところだ。

ただし、当日レンタルのみで、返却遅れの場合は何と10万円と書いてある。


他の店は一日200円で、延滞は一日分だが、少し距離がある。

聖人は状況を伝えて相談した。


「じゃあ代々木公園まで歩きましょう」


綾乃がそう提案したので、聖人と梓はそれに従うことにした。