絶滅危惧種『ヒト』

あちこちに人が倒れている。


いくらなんでもこんなには……。聖人はそう思った。


こんなに大勢の人が、一斉に発病するなんて思ってもいなかったのだ。


あまりにも異様な光景。

おそらく自動車の運転中に発病した者もいるのだろう。


道路が塞がって、大渋滞を引き起こしていた。


「聖人……」


梓が脅えた目で見つめて来る。


「とにかく戻ろう」


聖人は梓の目を見つめて頷くと、駅の構内に向かった。


「ねぇ、電車は動いてるんだよね?」


「さぁ、どうかな?」


聞かれても、聖人にだって分からない。


「だってさぁ、車と同じで、電車の運転士さんが運転中に発病したら、私たち死んじゃうんじゃないの?」


「それは……」


「じゃあタクシー?」


綾乃が口を挟む。


「いや、それを言ったら乗り物は全てまずいよ。それにこんな状況じゃ、タクシーに乗ってもいつ家に着くかなんて分かったもんじゃないだろ?」


聖人は渋滞の為に動かない道路の車を指差した。


「じゃあアナタうちまで歩けって言うの?」


綾乃はあからさまに嫌な顔をする。


「そんなことは言ってないけど……」


聖人は口ごもった。自宅のある国分寺までは20km以上ある。


歩いて帰れば7時間くらいだろうか?


梓と二人ならそれもありだが、母が一緒だとそうもいかない。

聖人は周囲を見回して、何かないかと考えた。