絶滅危惧種『ヒト』


「そうだ!」


綾乃が目を輝かせる。


「えっ、何かありますか?」


「ねぇ梓ちゃん。プリクラを撮りましょうよ」


「え?」



「私、プリクラって撮ったことがないのよ」



「そうなんですか?」



「ええ、梓ちゃんと一緒にプリクラを撮りたいわ」



「そうですねぇ、じゃあゲームセンターに行きましょう」


梓は満面の笑みで答えた。



「何よ聖人。何か不満でもあるの?」


ため息を吐いた聖人に向かって、綾乃が問い詰める。


「いいや、何もないよ」


聖人はもう一度ため息を吐いた。どうせ何を言ったところで却下されるに決まっているのだ。


聖人にはそれが何故なのかも分かっている。


母は兄のことが心配でたまらないのだろう。

なら、東城医大病院に行けばよさそうなものだが、自分もそう思うように、きっと兄も家族に発病の瞬間を見せたくないと思っているはずなのだ。


母もそれを分かっているから、無理をしてそれを紛らすために、今を楽しもうとしているに違いない。


自分と二人だけなら、いつもの生活スタイルだから、初めての梓との時間を楽しむことで、辛い想いを紛らわそうとしているのだと思った。



昼食を終わらせた三人はお店を出てゲームセンターに向かって歩き始める。


「今日も風が強いわねぇ」


綾乃が強風によって乱された髪の毛を気にした。


先週から低気圧の影響で、この時期特有の強い風が頻繁に吹いている。


この風によって、急速に日本中に細菌が飛び散っていることなど、もちろん綾乃は知らなかった。