絶滅危惧種『ヒト』

駅までは歩くとそこそこの距離があるけど、三人は並んで歩き始めた。


「お兄さんは?」


梓が聖人に聞く。


「うん。昨日は帰って来てないし、あれから連絡もとっていない」


「そう……」


「兄ちゃんといえば、感染してから発病するまでが、だいたい四日くらいってことだから、今日のお昼頃にはって言ってたけど……」


「ねぇ、こんなときに買い物なんて行ってて良いのかなぁ?」



「いいのよ梓ちゃん」


「お母様」


「いいの」


綾乃は梓を見つめた。


梓は何も言い返すことが出来なかった。綾乃の目の中に、息子のことを強く思う気持ちが見えたからだ。


ただ、今はお兄さんの無事を祈るだけだった。


もっとも人の心配をしている場合ではなく、自分自身もいつ発病するのか分からない。


今の梓の願いは、聖人の母との買い物が終わるまでは、発病しないでほしいということだった。


まだまだ死にたくない。いっぱいやりたいことがある。

いつ発病するのかと思うと怖くて怖くてたまらない。

昨日はそう思って、かなりナーバスになっていたし、夜もなかなか寝付けなかったけど、

今、こうして三人で歩いていると、自分のことよりも、聖人の母に対して、その願いを叶えてあげたいという気持ちになっていた。


「ところで今日はどこまで行くんですか?」



「そうねぇ~梓ちゃんはやっぱり、原宿とか渋谷が良いのかな?」


「いえ、別にどこでも良いですよ。お母様が行きたいところに行きましょう」


「ううん。普段は行かないような、若い子が行く場所に行ってみたいのよ」


綾乃は嬉しそうに微笑んだ。