陸さんとの、一つ一つの想い出が蘇ってくる。
彼がいなければ―――
あたしは今ここにいないかもしれない。
本当のあたしを見つけ出してくれて、そして愛してくれた。
彼を愛すのも、彼から愛されるのも、あたしだけだと、信じたい。
「藤沢…」
康大の顔が近づいてきたとき。
「…ごめん、康大…」
あたしはそうつぶやいた。
「彼はね…あたしの事をいつも泣かせたりするけどね…それはあたしがすごく彼の事が好きだからなの」
康大はじっとあたしを見つめている。
あたしは続けて言った。
「あたしの事を本気で泣かせる事ができるのも、本気で笑わせる事ができるのも、彼だけなの」
どうして、今までこんな簡単な事、気づかなかったんだろう。
陸さんを想うとこんなに涙が出てくるのに。



