「この前…あの帰りになんかあったんだろ?彼氏と…」
康大は俯いて砂をいじりだした。
「…うん」
「俺が変な事言ったからだよな…悪い。なんかヤキモチ…っつーの?正直、別れればいーななんて思ってた」
「康大…」
その時、康大の目線が、砂からあたしへと移った。
「俺、まじで藤沢を大事にしたい。そんな風に泣かせたりしない」
何故なのかわからないが、あたしは目に涙が溢れていた。
康大の手が、あたしの頬にそっと触れる。
『こんな付き合い方でもいーならっ』
その瞬間、陸さんに告白した時に言われた言葉が頭をよぎった。
それと同時に、その時に見せた優しい笑顔も思い出した。
あの時は、彼の過去の辛さや悲しみなんて、1ミリも知らなかった。



