「ただいまー‼」
「あら、あなた今日は早いわね」
「うん。今日くらいは早く帰ろうかと思って」
いそいそと背広を脱ぎ、鼻をクンクンする夫。
「枝豆とビール用意するから」
「あ、うん」
鼻はなにも嗅ぎつけなかったのだろう。首を傾げて行ってしまった。
「ただいまー‼」
「あれ、部活は?」
「今日は栄養つける日だから早く帰れって」
野球部の息子。
私、学校にクレーム入れてもいいかしら?
姑と舅もテーブルに座り、なにかを期待している顔が並ぶ。
唯一、まだなにも知らない小学3年生の娘が私の救い。
「さ、頂きましょうか」
ニッコリ笑って、箸を入れる。
「やっぱり暑い日はこれよねー‼」
「うん‼美味しい‼」
娘が続く。
あゝ娘、私のオアシス。
あなたが嫁ぐ日には、もういっそ、鰻、絶滅していたらいいわね。
そう願わないではいられない母に、冷たい視線が突き刺さる。
「えっとママ、これ、なにかな?」
夫。
「こんなんで栄養つきゃしねーし‼」
息子。
「めぐみさん、今日はなんの日だい?」
舅。
「今の人たちは教養がないから」
姑。



